技術者ワーママ からだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

つくり話 シュガーの物語①

またまた唐突ですみません、前回のシリーズにつながるお話です。

 

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彼はもとデータサイエンティストとしてとある大手企業に勤めていた。技術者の内ではとても高く評価されていたが、彼の成果を利用して社内外にアピールする同僚ばかりが目立ち、出世していたため外部への露出はほとんどない存在だった。

物静かで内向的な彼に対し、外向的で華やかな同僚は技術のプレゼンに優れていて会社の顔。彼はそれに対してさほど不満に思っていたわけではない。無知な役員への無意味な忖度に耐えながらも予算の確保のために何度も時間をとられることは彼にとって無駄な時間でしかない。出世する事はそんな時間が増える事。それを他人任せにできればもっと仕事のクオリティを上げることができると考えていた。同僚はそれを全部引き受ける代わりに出世したのだ。お互い利害が一致していた。

 

個人的に取引先などのエンジニアからもったいないからウチに来て、というスカウトはあった。でも、彼は今のポジションに不満はなかった。会社は大なり小なり不満に思う事はある。今のポジションは自分のやりたい事、出来ること、やりたくないことの落とし所としてたどり着いた場所だった。新しい環境、人間関係を再構築してまでやり直す気もなかった。

 

そんな彼がとあるヘッドハンターから連絡をもらった時には驚いた。

彼の経歴を調べ上げたそのヘッドハンターは、彼に電話でこう切り出した。

「あなたは以前、『シュガー』というアカウント名でSNSをしていませんでしたか?『シュガー』さんの力をお借りしたい、という方からの依頼を頂いています、是非お話だけでも聞いて頂けませんか?」

 

高校生の時、確かに彼はそのアカウント名を使っていた。でもそれはずっと前の話だ。今は別のアカウントを使っている、というより実名でのアカウントしかもう登録できないご時世だ。それに、もし『シュガー』を知っているとしたら、彼女に関係のある人物に違いない。もしかしたら、彼女かもしれない。そう思ったら話を聞かないわけにはいかなかった。

 

都内のあるホテルのラウンジでヘッドハンターが告げたクライアントとは、とある大手企業の創始者である彼女の父親だった。

 

ヘッドハンターも詳細を全て知っているわけではないらしい。ただ確かなことは、彼女がまだ生きている、ということだった。それだけでも彼にとっては希望だった。

そしてヘッドハンターから聞いた仕事の内容を聞いた時に、彼は迷わずこのオファーを受ける決意をした。

 

これは贖罪なのだ。自分にとっても、彼女の父親にとっても。

 

(つづく)

 

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