技術者ワーママ からだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

背中か、お腹か、シリコンか ー乳房再建の選択肢ー

乳房の全摘を行う場合、大きく4つの選択肢があります。

・再建しない

・再建を行う(同時または治療が落ち着いた後に実施)

 - 背中の組織の移植

 - お腹の組織の移植

 - シリコンまたはインプラント挿入(+脂肪注入)

これらのうち、どの方式にするかを選択する必要があります。今日はそれぞれの選択肢について体験談と併せてご紹介したいと思います。

各術式の概要

同時再建の術式を選ぶうえでポイントになるのは大きく下記の4つではないかと思います。ちなみに、基本的にはいずれの術式も保険適用できるので、高額療養費制度を利用すれば手術費用はあまり変わりません。

 ① 術後の違和感をどれくらい許容できるか(乳房と傷)

 ② 乳房の大きさ

 ③ 妊娠‐出産の希望があるか

 ④ 入院期間(=長いほど体に負担がかかる)

 これをそれぞれまとめるとこんな感じ。

  背中 お腹

シリコン

(※インプラント)

術後の違和感(乳房) あまりない あまりない 喪失感、異物感
術後の違和感(傷)

背中痛い

傷目立つ(背)

お腹痛い

傷残る

人により痛みあり

傷目立たない

乳房の大きさ 小さい人向き 制約なし 制約なし
妊娠・出産 可能 不可 可能
入院期間 1-2週間程度 2週間程度 数日

 ※シリコンの代わりに皮膚拡張器を入れる場合もあります。

参考 乳房再建術とは | 乳房再建術 | 乳房再建ナビ

  上とは別に、お腹を選択すると、腹肉を合法的?に胸に移動できるという女性には抗いがたいメリットがあります。

各術式の体験談

私が実際にやった背中の組織を使った再建の体験と、同室にいらっしゃった他の方法を選択した方のお話や様子から感じたことを書きます。あくまで私の周辺の人の話なので、個人差はあると思いますが、参考になれば幸いです。

 

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さんによるイラストACからのイラスト

背中の組織を使った再建

選択の理由

私の場合、子供のことを考えて

・乳房の違和感が少ない

・ 出産の可能性を残す(子供が兄弟が欲しいと言っていたので)

の観点から、背中の自己組織を使う術式を希望しました。まぁ腹肉は自力で落とせってことですよね。仕方ない。

問題点 

 形成の先生にそれを伝えたところ、一つ問題点が。乳房の大きさです(予想外)。

 胸は特に大きくもで小さくもない私(スタイルがいいということにしておいてください)。そして特別痩せているわけでも太っているわけでもない。先生は私の背肉をつまみながら、

「うーん、手術前と同じ大きさは難しいかもー。ちょっと小さくなってもいい?

これは悩みました。ちょっとってどれくらい?って話ですよ。

「KOMOMONさんの場合、もともと右の方が少し左より小さいんだよね。そんなに変わらないくらいの大きさに出来るんじゃないかと思うんだ。

ただ、摘出する組織の量がまだ正確にわからないのと、背中の組織って筋肉が多いから、再建後しばらくすると(肉が)痩せて小さくなることがあって、どれくらいの大きさで落ち着くかは分からないからねぇ。」

と言われたので、ダメもとでちょっとワガママな相談をしてみました。

「もし術後しばらくして、どうしても気になるくらい違いが出てきた場合、追加で手術する事ってできるんですか?」

「そうだねぇ。基本的には『美容整形』の範囲になって、他で整形してくださいって話にはなるんだけど、程度によっては、乳頭の形成手術をするタイミングに限って、一緒に形成で脂肪を入れることはできるかな。どれくらい定着するかは分からないけど。」

この先生の言葉が決め手になって、背中の自己組織を使う術式でお願いすることにしました。

実際に選択した感想
一言でいえば、細々した不都合はあるけど、そんなに困らないし、子供の希望にも応えられた結果になったので概ね満足です。
 しばらくしてから分かったのですが、乳房が大きい人ほど術後の問題が大きくなる気がするので、胸が大きめの方は主治医と相談した方がいいと思います。私の場合「背中の組織を使うには中途半端に大きい乳房」だったようで、術後に形成の先生が「ちょっと頑張って多めに(組織)取っといたから★」とおっしゃってました。手術直後はみっちみちに肉が入っていたのですが、術後1年以上経過して、今ちょうどいいボリュームに落ち着いているので先生の判断は正しかったわけです。触った感じも少し固めかな、という程度でほぼ満足です。
 術後に痛みがありますが、お腹に比べると術後の体力の回復は早いと思います。すぐ歩けるようになり、入院後半はかなり楽に過ごせます。
 あと、背中の組織を使ったことによるメリットがもう一つありました。乳頭の再建を1年後にしたのですが、背中の皮膚が厚めだったので、乳頭が結構大きく、しっかりした感じに仕上がりました(こちらについては後日別記事にてお話しする予定です)。結構これ重要です、つぶれないように気を遣うので。
  ここからが不都合(デメリット)の話。
 入院時の記事にも書いていますが、背中の組織を取ったところが痛くなります。イメージとしては靴擦れの水膨れが背中の1/3くらい広がってる感じ。靴擦れと一緒でしばらくすればくっつくのでそれまで寝るとき痛いです。1か月くらい?まぁ慣れます。
 次、背中の組織を血管ごと脇の内側をくぐらせて持ってくるので、脇の下と持ってきた組織に違和感があります。脇の下はずっと「何かが挟まっている感じ」です。時間が経つと違和感が小さくはなりますがなくなることはありません。1年くらいは術側を下にして横向きで寝ることは難しいでしょう。あと、背中の組織と周辺の胸の組織に血流のタイムラグがあるようで、寝返りを打った時や、急に寒いところに行ったときなどは組織がギュッと縮まる感じがあります。ちょっと気持ち悪いですが、これも慣れます。
 あと、一番予想外だったのは背中の傷。これも乳房の大きさに影響するのですが、私の場合は大きめに組織を取った影響で、「侍に斬られたような傷」が背中に残りました。温泉に入るときはバスタオル巻かないと胸の傷より目立ちます。どうしても気になる場合は傷を消す手術を受けるという手もあります(保険の範囲になるかは微妙)。
 温泉だと胸と一緒にお腹も隠れるから、お腹の方が実は気にならないかも。後述しますが、乳がん患者用の入浴用カバーも市販されているので、それを着用するのも手だと思います。

お腹の組織を使った再建

偶然同室の方で両胸同時摘出₊お腹の組織で再建という方がいらっしゃいました。
最初のうちは私と同じ様子だったのですが、その方は手術3日後くらいまでは自力で起きあがれず、食事も家族の方が付きっきりで介助していました。再建に使う自己組織はコンディションのいいところを使う必要があるそうで、腹筋の一部と脂肪を血管ごと持ってくる場合が多いようです。腹筋を日ごろから鍛えていれば話は別ですが、そうでないと腹筋持っていかれると体を支えるのが大変です。起き上がる、立つ、歩くは背中と比べると回復まで時間がかかるようです。その方の場合は1週間くらいは歩行器を使われていました。トイレやシャンプーなども介助が必要だったので、日中は家族についてもらわないと結構しんどいかもしれません。
 メリットとしては、背中の場合にあるような背中の痛み、脇の下の違和感などはありません。血管をつなぎなおすので(壊死するリスクはありますが)血流のタイムラグも心配ないでしょう。お腹に傷は残りますが、日常的に腹を出す人はそういないので、妊娠を考えていないならお腹の方がいいかもしれませんね。

インプラントを使った再建

シリコンではありませんが、摘出手術の際に皮膚拡張器を挿入し、皮膚を伸ばした後自己組織(脂肪)を使った再建手術をした方にお話を聞けたのでこちらも紹介します。
この方は部分切除だったそうですが、再建が必要だったので、皮膚拡張器を入れたそうです。皮膚拡張は、定期的に通って拡張器の中に少しずつ水を入れて皮膚を広げるのだそうです。そして、ちょうどいい形まで皮膚が伸びたところで、インプラントを取り出して、そこに組織(脂肪)を入れるそうです。
 なんといってもこのメリットは胸の傷が小さくて済むことだと思います。形も拡張器で整えてからなので自由度が高い方法だと思います。再建に使う組織も皮膚が必要ないのでこちらも傷口は目立たなくできるでしょう。この方は太ももの組織を使ったそうです。余談ですが、再建に使う組織は定着を優先させるため、コンディションのいい脂肪を使うそうです。そのため、腹肉など取って欲しい組織があっても必ずそこから取ってもらえるわけではないそうです、残念
 デメリットとしては、やっぱり再建前は喪失感、異物感があること。この方の場合全摘でなかったので摘出後の喪失感が小さかったようですが、特に拡張器内の水がタプタプするのが気持ち悪かったとおっしゃってました。あと、少しずつ皮膚を伸ばすので、定期的に拡張器に水を入れるためだけに病院に行く必要があり、負担になるそうです。とはいえ、一時的なものなので、もしこれらが許容できるのであれば長期的には一番いい選択肢かも、と個人的には思いました。

再建しないという選択肢について 

入院中にリンパマッサージの説明会を受けたのですが、その際に他の病室にいる患者さんともお話しする機会がありました。基本的には再建手術は現在保険適用であり、高額医療費の制度を適用すれば10万円程度の自己負担で手術を受けることができます。それでも、お話しした患者さんの中には再建しない、と決めている方がいらっしゃいました。再建しない選択肢についても少し触れておきたいと思います。 再建については、手術可能かどうかも含めて、全摘のタイミングで同時再建するかしないかに分かれます。同時再建を行わない場合には、反対側の乳房の大きさとバランスを取るためにブラジャーとパッドを使うそうです。ちなみに、お話を聞いた患者さんは、かれこれ20年前に手術をされたそうで、お手玉のような自作のパッドを作って、ブラジャーに縫い付けて使われていました。皮膚がこすれないようにタオルを挟むなど工夫されていたそうです。市販品はそのあたりも工夫がされているから使いやすいけど、毎日の事だから自分で作った方が安いと。さすがです。 正直なところ、本人が気にならないのであれば、確かに再建しない、という考えもあるのかもしれません。以前は再建手術が保険適用されるには色々条件があったので、再建しそびれてそのまま「もういいか」というのもわかる気がします。実は私は乳頭の再建まで1年ほど放置しましたが、この間「別になくても困らないから要らないかも」とちょっと思っていました。。  前述の通り、乳がん手術を受けた人のための「入浴時用カバー」なるものは市販されています。温泉浴場で「水着は着用しないで、タオルは浴槽に入れないで」といった注意書きがありますが、このカバーは着用したまま入っていい扱いになっているそうです。ただ、他のお客さんも含めてそれが認知されて受け入れられるかは全く別の話なので、実際に入ったらどうなのか、というところまでは分かりません。。察して、ってところなんでしょうね。お話した患者さんは、20年たって反対側も摘出することになって悲しい、とおっしゃっていましたが、「両方なくなったらこれはこれですっきりする、趣味でテニスをしているけど、胸がなくなれば邪魔にならなくていいわ」と笑っていました。カッコよかったです。やっぱり人それぞれの考え方に合った選択をすることが大切なんですね。

患者に出来る事

 今にして思うと、どの病院を選ぶかってすごく重要なのですが、実際には治療方針の細かいところまで決まらないとどの病院(先生)が自分に合ってるかが分からないんですよね。一患者に出来ることは、先生や看護師さんとの信頼関係が築けそうな病院を根気よく選んで自分がどうしたいのかを伝えることなんだと思いました。私もいつか反対側が発症する可能性があります。今回と同じように背中の組織を使った再建は可能ですが、20年後はどうなっているんでしょうね。初期の乳癌に手術以外の選択肢が当たり前にある時代になっていることを祈っています。
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