技術者ワーママ からだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

つくり話 シュガーの物語④

③の続きです。ちょっとマニアック。

 

三木と話した後にエージェントが合流して、人事担当者を含めた形式的な面接を済ませ、その場で彼の採用は決まった。通常、エージェントは紹介先の企業の面接には初めから同行するのが一般的だが、三木の希望で後から来てもらったそうだ。恐らくエージェントは自分を探してコンタクトを取るためだけに依頼したのではないかと彼は思った。

 

採用の決まった彼は、そのまま自宅に帰った。妻もフルタイムで働いており、娘は保育園で預かってもらっている。しばらくは誰も帰ってこないはずだ。

 

コーヒーを淹れてダイニングに座ると、三木からもらってきた資料に目を通した。パンフレットなどの事業内容や福利厚生などを説明するものがほとんどだ。転職の意思を示してもこれから現職との退職時期の交渉などがある。細かい情報はエージェント経由で後から送られてくるだろう。

 

待遇については現職よりずっと高い金額を提示されていた。ただ、表向きは現在進行中のプロジェクトマネージャーのサポート業務となっている。アドバイザーか社内コンサルタントのようなポジションのようだ、直接手を出すというよりはプロジェクトの様子を見ながら、見所のある若手を探して育ててやって欲しいということらしい。正直データサイエンティストは人材不足で、現職でもギリギリの人数で回している状況だった。本当に育てる余裕があるとは信じ難いが、それができるのであれば将来性のある会社だと思う。

そして、三木から頼まれた仕事は、SNS利用者のメンタルケアに関わるサービス立ち上げる所から始めて欲しい、というものだった。

今でもメンタルケアのAIアプリは存在するが、あくまで利用者が自分でケアが必要だと自覚していなければならない。ケアが必要なのに自覚していない状況の方が深刻だが、早めの段階からケアができる方が回復も早い。SNSで他者から誹謗中傷などの被害を受けた場合に限らず、投稿の内容からストレス状態をAIが把握し、カウンセラーとして利用者とコミュニケーションを取るようにする、というコンセプトだと言われた。

何より素晴らしいのは、この開発についての進め方を原則任せてもらえる、という条件だ。もちろん予算やインフラなどには制限があるが、一番重要な使うデータを集める所から任せてもらえることは滅多にない。大抵使えるかどうかもわからない社内データを渡されて何とかしろと言われることが多いのだ。

「僕も多くのプロジェクトを立ち上げたが、半端な状態で受け取るのって気持ち悪いでしょ?」

と三木に言われて、この人の仕事ならきっと成功させられる、と思えた。きっとこの機会を逃したら、二度とチャンスはないだろう。

自分の最高の仕事ができる環境、起業せずに実現できるかもしれない。

 

家族と職場にどう切り出そう、と考えながら冷めたコーヒーを啜った。

 

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