技術者ワーママ からだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

つくり話 再会⑦

前回の続きです。

 

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優香からの返信は数日間来なかった。確かに知らない相手から中傷されている状態だと好んで見たくはないだろう。

 

彼女の過去の投稿を読んでみた。女子高生らしいケーキなどのスイーツに混ざって、花や夕焼けなどの景色の写真も投稿されている。そのうちの1つに、夕暮れ薄曇りの雲間から光の筋が差し込んでいる写真があった。その写真には「偶然撮れました、不思議な天気」とコメントが添えてある。

薄明光線と呼ばれるこの現象は『天使の梯子』とも呼ばれている。光の筋を伝って天使が降りてくる様子を例えた表現で、見ると幸せになるとも言われているそうだ。

彼はこの投稿にコメントをつけた。

「『天使の梯子』の写真、とても綺麗ですね。Yuukaさんにも幸運が訪れますように」

 

翌日、彼女から返信が届いていた。

「シュガーさん、メッセージありがとう。スイーツ好きなの?こちらこそよろしくね」

 

こうして彼はシュガーとして彼女と色々やり取りをするようになった。好きなスイーツや趣味、ファッションの話など、正直彼にはほとんど興味はなかったが、彼女はシュガーが女性だと思ったようだ。何とか話を合わせるために色々調べながら返事をしていた。

 

ある時彼女からこんなメッセージが届いた。

「シュガーとは気が合いそう、同じ学校だったらすごく楽しく過ごせそうなのにな。シュガーは高校生?学校楽しい?」

彼女の学校での様子を思うと切なくなった。どう答えたものか悩んで

「今年大学受験。勉強ばっかりでそこまで楽しくはないかな。そっちは?大丈夫?」

と無難な返事をした。

「色々あって今はちょっとしんどいかな。去年までは楽しかったんだけど。」

「そっか…大変なんだね。

余計なお世話かもだけど、Yuukaのこと悪く書いてるコメントは大丈夫?心当たりあるの?」

「うん…何となくは。でも私にも原因はあるし、誰なのかははっきり分からないから…」

「じゃあ、設定変えてみたらどうかな?嫌なコメントするアカウントからアクセスできないようにしたり、公開範囲を変えれば、知らない人からはコメントできなくなるよ。」

「えっ、そんなこと出来るんだ!どうやるの?」

「画面の右上に歯車のマークがあるでしょ?そこを開くと…」

と手順を説明する。

「そうなんだ、ありがとう!後でやってみるね。シュガー詳しいんだね、学校にも詳しい知り合いがいるんだけど、なかなか聞けなくて。」

自分の事だ、と彼は思った。知り合いという響きが少し寂しかった。

「もしかしたら、制限かけると別の嫌がらせがあるかもしれないから、何か困ったことがあったら教えてね。でもきっと、その知り合いの人も聞いたら助けてくれると思うよ。」

「うん、ありがとう。シュガーがいてくれて本当によかった!」

 

学校では、相変わらず彼女は一軍女子のグループにいるようだ。健人が一緒の時にはいかにも親友みたいに振る舞っている女子が、健人がいなくなると途端に冷たくなる。廊下の窓から見ている彼には事態が改善することを願うしか出来なかった。

 

 彼女の投稿からは中傷のコメントが消えて、新しく投稿されるようになった。彼女に様子を聞くと今のところ変わったことはない、と言われホッとした。新しい投稿には有名店のケーキ。彼女も少し気分が上向いてきたのかもしれない。

 

毎日のようにやり取りしていたが、数日後に急に彼女からのメッセージが来なくなった。心配になって昼休みに彼女のクラスをのぞいてみると、彼女の姿が見えない。休みかと思って自分の教室に戻ろうとすると、ちょうど彼女が1人で俯きながら歩いてきた。

「三木」

と声をかけると彼女は顔を上げて彼を見た。泣いていたのか、目が赤くなっていた。彼女はあわてて作り笑いを浮かべ

「あ、佐藤くん、なんか久しぶりに話したね。」

と答える。

「なんかあったの?」

と彼が聞くと、一瞬顔を歪ませた後に少し間があってから口を開いた。

「…佐藤君は今『情報』の授業ってあるの?」

「あぁ、文系クラスとは違うけど、似たようなのは受けてるよ、分かんないなら教えようか?」

出来るだけ優しく言ったつもりだったが、彼女は目を伏せて呟いた。

「…ううん、大丈夫、じゃ」

と逃げるように教室に戻ってしまった。教室に入るなり一軍女子に呼ばれて慌てて駆け寄っていた。

 

 明らかに様子がおかしい。ただ、これ以上聞いても多分彼女は答えない気がした。健人は何をしてるのかと腹立たしくなってきた。今も教室には見当たらない。仕方なく教室に戻り、放課後に健人を探すことにした。

 放課後健人を捕まえると意外そうな顔をされた。

「なぁ、最近三木の様子おかしくないか?何かあった?」

「あぁ。勉強しんどいのかもなぁ、志望校変えるから推薦やめて受験するって言ってたし」

「えっ、去年推薦で探すって言ってなかったか?三木成績いい方だろ?大学の推薦枠だって少なくないんだから選べるだろ。国立でも受けるのか?」

「いやぁ、教えてくれないんだよ。何でだろうな。」

他人事みたいな言い方に腹が立った。でも、一軍女子と縁を切りたくて言わないのかもしれない。だとすれば健人を責めても仕方ないと思った。

「あと、情報の授業って何やってんの?お前と三木はついていけてんのか?」

「いやぁ、ついてけねーよ、去年楽したから全然分かんねーの。仕方ないから今年はパソコンのメッセージ飛ばすやつで他の奴らに教えてもらってる。三木も送ってもらってるらしいんだけど間違えてばっかりでよく先生に注意されてんだよね。そのせいか情報の時間すげーテンション低いんだよな。」

「…なぁ、潮田と三木は同じメッセージ受け取ってんの?」

「分かんねー。だってあれって誰宛か分かんの?」

「…俺が悪かったわ。もういいや。

あと潮田、学校にいる間は出来るだけ三木と一緒にいてやれよ」

「おぉ、そうしたいんだけど、そうすると周りの女子がうるせーからさ。」

「見てるだけでいい、離れるなよ。」

「おぅ、わかったよ」

彼の真剣な顔に気圧され健人は答えた。

 

多分原因は情報の授業だ。彼はパソコン部屋に向かった。

 

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